社会・文化

令和5年6月26日
1. 社会
(1) 社会の特徴
歴史的にバーレーンは、古代バビロニア、アッシリア時代にはディルムンと呼ばれた有力な貿易中継地だった。また紀元前3世紀から15世紀にかけ、真珠の産地として栄えた。18世紀にアラビア半島から移住したハリーファ家がバーレーンの礎を築いた。1932年には石油の生産を開始、その後近代化を進め、1971年8月英国から独立した。
古くから伝統的中継貿易の拠点となってきたバーレーンは、共存・寛容・開放を国是としている。国際化、多国籍化が進み、人口約150万人のうち約半数を外国人が占めている。その開放的な社会体制は女性の顕著な社会進出を生んでいる。また、公用語はアラビア語であるが、日常生活において英語が広く通じる。
他方、国家を統治する王族はイスラム教スンニ派であるが、全人口の7割を占めるイスラム教徒のうち7割をシーア派が占めている。
 
(2) 労働
政府は、バーレーン人の雇用促進に努めているが、全労働人口に占める外国人の割合は依然71%(2022年第一四半期LMRA統計)と高く、民間企業に対してバーレーン人の雇用比率基準を規定し、外国人労働者の労働許可手数料の値上げ、外国人労働者による就業禁止業種の制定や外国人不法就労者の取締まりを強化する等の自国民の雇用促進策を講じている。また、中等教育機関として、普通高校とは別に、職業訓練校の設置、カリキュラムの充実、施設の改善などにも力を入れ、バーレーン人の雇用促進の取り組みを行っている。
2008年8月、労働市場規制局(LMRA)により、民間企業に対して外国人労働者雇用に対する月額課金が導入された(現行制度では、外国人5人まで1人あたり月額5BD、6人目から1人あたり月額10BD)。これにより自国民の相対的コスト競争力を高める一方、その収入を財源にして、労働基金(Tamkeen)により自国民労働能力の強化を図る職業訓練プログラム等が実施されている。他方、当該課金は、外国人労働者を雇う中小企業事業者にとり、過大な負担となっており、ビジネス界の反発は根強い。
 
(3) 社会保障
貧困者、身障者などを対象とした福祉助成金支給制度がある。また、社会保険制度が1976年に導入された。 同制度はバーレーン国籍者を対象として始まったが、現在は一部例外はあるものの外国人労働者も対象とされており、(1)老齢、疾病、死亡、労災、病気又は出産による一時的欠勤、失業等に係る一時手当の支給、(2)定年退職後の年金の支給等にかかわるものがある。保険の原資としては通常雇用者が給与額の17%を、被雇用者が給与額の8%(外国人労働者の場合は、雇用者が3%、被雇用者が1%)を負担する。 

(4) 保健・医療
バーレーンの医療環境は、中東地域では比較的整備されていると言われているものの、手術を必要とするような重疾患の場合は、時間が許す限り、日本もしくは欧州での受診・治療が望ましい。一般疾患は、英語での受診が可能で一定の医療水準が期待できる私立病院が安心とされている。
バーレーンには特別な風土病はなく、マラリア汚染地域も無いが、中東呼吸器症候群(MERS)は中東地域での発生が終息しておらず、感染源となるラクダとの接触には注意を払う必要がある。また、水道水の水質が良くないこと、日によって大気汚染が深刻な日があること等も日常生活の健康管理上注意を要する点である。
バーレーン政府は、新型コロナ感染症に対する検査体制の整備やワクチン接種に積極的であり、他国よりも早く感染対策を実施した。また、検査結果や予防接種の記録を管理するスマートフォン・アプリも開発・実用化され、保健分野におけるICT技術の活用が進んでいる。 
●参考リンク: 外務省・世界の医療事情(バーレーン)

(5) 教育
教育制度は、6.3.3.4制であり、憲法は義務教育を保障している。6歳から15歳までが義務教育であり、高校まで公立校の授業料は無償である。近年、バーレーン政府は教育を国家発展のための礎としてその取り組みを強めており、教育制度の改革や学校施設の充実を図っている。識字率は97.5%(2020年)である。高等教育機関としては、国立の総合大学であるバーレーン大学や国立バーレーン・ポリテクニック、GCCが共同運営するアラビアン・ガルフ大学の他に、計13の私立大学が認可・設置されている。

2. 文化
(1) 特徴
他の湾岸諸国と同様にイスラム文化を基調とした文化であり、アラブ諸国の他、インド等アジア大陸の近隣諸国をはじめ欧米諸国との文化交流も活発に行っている。政府は各種文化団体の活動を支援しており、外国人コミュニティによる文化事業も活発に行われている。
 
(2) 主要文化施設
国内の遺跡から発掘された出土品やバーレーンの自然や動植物の分布等を展示した国立博物館、各種コーランの教典やイスラム関連の書物等を展示したコーラン博物館、1932年に湾岸地域で初めて石油が噴出した第1号油井に隣接して石油開発の歴史や掘削機器等を展示した石油博物館の他、約600名収容可能な音楽公演用の文化ホール、中東では最大規模(約750名収容可能な大劇場及び150の可動式席を配す小規模のコンサートホールを有する)の国立劇場及び芸術作品を展示するアートセンター等がある。
また、政府は遺跡の発掘・保護にも積極的に取り組んでいる。紀元前に当地に興ったとされるディルムン文明の遺品や16世紀に当地に侵攻したポルトガル軍の要塞をはじめ多数の遺跡が発掘されており、カルアト・アル・バーレーン(バーレーン要塞)は2005年にユネスコ世界遺産に登録された。ユネスコ世界遺産としては他に、2012年ムハッラク島に残る真珠産業の遺産群(パール・パス)、2019年中南部に分布するディルムンの墳墓群が登録され、観光資源としても期待されている。
なお、南部サヒール地区の動物園には、日本の造園業者がその設計・建設を請け負った日本庭園があり、入園者は見学することができる。
 
(3) 宗教
憲法によりイスラム教が国教とされているが、政府は他の宗教に対しても寛容な立場を採っており、国内にはキリスト教教会やヒンドゥー寺院なども設置されている。2021年12月にはアラビア半島で最大とされるカトリック教会(The Cathedral of Our Lady of Arabia)が設立されている。
主な宗教行事としては、イスラム教に基づいた断食(ラマダン月)、聖地マッカ巡礼、アーシューラ(シーア派の殉教者イマーム・フセインの追悼祭礼)等がある。
 
(4) 報道
ア 新聞
主要日刊紙としては、アラビア語4紙(アフバール・アル=ハリージ、アル=アヤーム、アル=ビラード、アル=ワタン)及び英語紙2紙(ガルフ・デイリー・ニュース、デイリー・トリビューン)が発行されている。
イ ラジオ及びテレビ
テレビ・ラジオ放送は情報省の管轄の下、国営放送局の Bahrain Radio & TV が統括し放映している。テレビは5チャンネル、ラジオは5つのプログラムを FM局、 AM局、短波局を通じて放送している。最近、ラジオ・バーレーンはムムタラカート・バーレーンラジオ社に加盟した。
 
(5) スポーツ
バーレーンで盛んな主なスポーツは、サッカー、ハンドボール、バレーボール、バスケットボール等であり、企業・クラブのチームによるリーグ戦も行われている。2021年実施された東京オリンピックには5競技(ボクシング、陸上、水泳、ハンドボール、射撃)に23名の選手を派遣するなど、各種スポーツのレベル向上を目指す他、国際大会の開催誘致にも力を入れている。また、2004年に開業したバーレーン国際サーキットでは、F1グランプリなどモータースポーツの国際大会が実施されている。
その他伝統スポーツとしての馬術は、王族をはじめ上流階級の間に同好者が多い。馬術の他、競馬も人気がある。